「プレゼンス」
レッド・ツェッペリン

ジミー・ペイジ:ギター
ロバート・プラント:ヴォーカル
ジョン・ポール・ジョーンズ:ベース
ジョン・ボンナム:ドラム

音が聴覚以外の感覚を通して人間に対峙した最初の音楽。初めて聞いたときにそう思ったし、今でもそう思ってる。
(でも世の中広いから他にもそういった音があるのかもしれない)
音がこれほどまでに意思を持って自立していることにただ呆然。
これはアルバムコンセプトとか、作曲法とか、奏法とか、そういったものとは無縁なところにある力、
「光るものは全て金になる」
という音楽の魔法なのだと思う。
レッド・ツェッペリンは音楽がただの空気の振動ではなく、手に取ることができ、私たちと一緒に存在し、共に生きるものとして示してみせたわけだ。
すごーい。

このアルバムを聞いたレッド・ツェッペリン大好き人間の音楽評論家渋谷陽一氏はいたく興奮し、
「次のアルバムは音を音として独立させた前衛音楽のようなものになるのではないか!」
と力んだ。
ところがライブ盤を経て出された次のアルバムは「イン・スルー・ジ・アウトドア」という、ラテン風ありカントリー風ありの楽しい内容で、渋谷陽一氏は思いっきりこけたらしい。
無理からぬ話ではあるが、この辺がレッド・ツェッペリンの油断できないところだ。

リフというロックの基本にして究極の技を極めたのがレッド・ツェッペリンだが、興味深いのはそのリズムである。
レッド・ツェッペリンのリズムはかっちょいいが、決してスムーズではない。どちらかというとぎこちない、頭で考え出されたスクエアなリズムである。
「グルーブ感は理屈じゃないんだ!」
なんて具合に絶叫する人が多い中、
「ギターのリフがこうね、だからベースはここに来て、バスドラはこことここで、スネアはベースの2つ後と3つ後にしてポリにするの」
なんて具合にリズムを編み出している(のじゃないかな)。
ただこういった考え方はこの時代のプログレッシブ・ロックなんかでは普通だったから、ジミー・ペイジも
「ふーん」
なんて言ってそういったレコードを聴いていたのかも知れない。

レッド・ツェッペリンはエレクトリックサウンドだけでなく、アコースティックもとてもよい。
「限りなき戦い」や「ゴーイング・トゥ・カリフォルニア」を聞いているとぶっ飛んでしまう。
レッド・ツェッペリンがすごいのは、他のロックバンドにありがちな
「ちょっと変化をつけるために生ギター弾いてみました」
的なやり方ではなく、完全に自分たちのスタイルとしてそれを持っていることだ。

分類すればハードロックになるのだろうけど、レッド・ツェッペリンの音はそれだけでは捉えきれない。
ディープパープルは必ずエンジントラブルやガス欠になって止まってしまうに違いないが、レッド・ツェッペリンは永遠に進み続けることができる。

惜しい。





(2005年2月19日)