「火の鳥」
マハビシュヌ・オーケストラ

ジョン・マクラフリン:ギター
ジェリー・グッドマン:ヴァイオリン
ヤン・ハマー:キーボード
リック・レアード:ベース
ビリー・コブハム:ドラム

「いいぜ」
とこのアルバムを勧めてくれた彼はうれしそうだった。

当時、私はうまくもないベースを弾いていて、彼はバンドのドラマーだった。彼は大学生にしてすでに少々アル中気味で、一定時間酒が切れると怒りっぽくなった。元暴走族なのでそんなときは怖かったが、その他の点では極めていいやつだった。
そんな彼がプログレッシブ・ロック一辺倒だった私に教えてくれたのがマハビシュヌ・オーケストラだった。
アル中が好む音楽とはどんなものかと思い購入した。

聞いてみてたまげましたね。
ブッ飛び
飛びましたよ
正拳突き連続1万本!みたいなマクラフリンの虜になってしまいました。

火の鳥は初めから最後までがクライマックス。節操ないが快感。
ジョン・マクラフリンのギターとジェリー・グッドマンのヴァイオリンが泣いて叫んで吼えまくります。
この大喧騒の中でにこやかにビシバシドラミングを展開するのがビリー・コブハム。別名ビリー・昆布ハムなどとも呼ばれているがたいへんなおっさんである。
叩かれたドラムセットがみしみしいっている。

この頃のマハビシュヌ・オーケストラは超ハッタリバンドとも言われている。仰々しいリフ、やみくもに突っ走るフレーズ、ダブルネックギター。ま、そういわれればそうかも。
でもこういう形態を考え出すマクラフリンはやっぱりすごいと思う。

マクラフリンの音楽のおもしろいところに「不揃い」というのがある。
テクニックがある人達が集まると演奏はびしっと決めたいと思うはずだ。出だしとかユニゾンとかね。でもマクラフリンは気にしない。せえの、で始めてしまうし、曲によってはわざと練習していないのではないかと思わせる。
その不揃いの距離をマクラフリンは楽しんでいる。これがいい緊張感を生んでいると思う。

後日、このアルバムを聞いたギター弾きが、
「ジェフ・ベックがやってる音楽ってのは、すでにマクラフリンがやってたんだ」
と感心していた。その頃ちょうどジェフ・ベックのブロウ・バイ・ブロウ(邦題「ギター殺人者の凱旋」)やワイアードが評判になっていた。
これは偶然ではない。ジェフ・ベックはマハビシュヌ・オーケストラとのツアーでヒントをつかんだという話だ。
ちなみにどちらのアルバムにもヤン・ハマーが参加しているのが興味深い。この人はギター大好きなんだな。

それにしてもベックとマクラフリンのジョイントコンサート
いいなあ

マクラフリンはどんどん進化する。
この火の鳥以降もスーパー・ギター・トリオやシャクティでの活動で話題を呼んだ。

マクラフリンはどこへ行くかよくわかんない。





(2005年2月19日)