「エマーソン・レイク&パーマー」
エマーソン・レイク&パーマー

キース・エマーソン:キーボード
グレッグ・レイク:ベース
カール・パーマー:ドラム

イエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)を四大プログレッシブ・ロック・バンドと呼んだ時期もあったが今はどうなんだろう?
もっとも当時はそれまでにない音楽性、演奏力を持つロックをプログレッシブ・ロックと称していたが、今は「プログレッシブ・ロック」というカテゴリーができているようだ。なんだかな。

EL&Pは1970年に結成されている。EL&Pと他の四大プログレッシブ・ロック・バンドの相違点のひとつは、EL&Pが結成当時から注目され有名だったことである。
ジョン・アンダーソンはイエス結成前、ライブハウスのボーイとして疲れる人生を送っていた。
キング・クリムゾンのオリジナルメンバーであるグレッグ・レイクは駅の便所掃除をしていたというし、デビューアルバムで歴史的な名演をしているマイケル・ジャイルスはサーカスの楽団にいた。
ピンク・フロイドについては詳しくないが、オリジナルメンバーのシド・バレットはアコースティックギターの中にネコを入れてステージに登場したと伝えられるから、めちゃくちゃアンダーグラウンドである。
そこへいくとEL&Pは違う。

便所掃除係りのグレッグ・レイクはキング・クリムゾンの活動で一躍著名ミュージシャンとなっていたし、キース・エマーソンはすでにナイスというバンドで実績を上げていた。つまりすごく注目されるデビューであったわけだ。
ちなみにジョン・アンダーソンはナイスのヴォーカリストとして雇ってもらおうと頼みに行き、キース・エマーソンに断られるという過去も持っている。

そのデビューアルバムであるが、私はEL&Pのアルバムの中ではこれがいっとう好き。完成度なら「恐怖の頭脳改革」だし、聞きやすさなら「展覧会の絵」だと思うけど、やっぱりファーストアルバムがいい。
私がEL&Pに抱くイメージ、それは馬鹿力。これをもっとも強く感じるのだ。
10代後半から20代前半にかけて、なんだかすごくいらつくし、なんだかやたらと身体が何かを欲しがるんですよね。
そんな時、震える指でEL&Pをターンテーブルに乗せると、その馬鹿力でぎりぎりと締め上げられて、身体の中のどす黒いものが頭のてっぺんから抜けていく。
EL&Pは生活必需品。

バンドを結成してからのEL&Pの活動はすごい。アルバムはどんどん出すわ、ツアーにはがんがん行くわ。すごい勢いである。

「僕はパーカッシブなキーボードプレイヤーだと思う。グレッグもパーカッシブなベースプレイヤーだし、カールはまさにパーカッシブなパーカッショニストだ。」
パーカッシブ(衝動的)というキーワードについてエマーソンは語る。

EL&Pのメンバーはみんな馬鹿テク(死語か?)だ。
カール・パーマーのドラムセンスはどうかと思うが、キース・エマーソンのキーボードにはよく似合うし、とにかく手数は多い。
グレッグ・レイクのベースも実にすばやい。
しかしなんといってもキース・エマーソンだ。この人の演奏を聞くと「不世出」という言葉が自然に頭に浮かぶ。
EL&Pのライブ映像を見ると、ただでさえ小難しいフレーズを逆向きに弾いたりしている。文章で書くとわかりにくいけど、オルガンの反対側に回って曲を弾くんですね。ギターでいえば左右逆の手で演奏するようなもの。すごいを通り越してなんだか少しおかしいんじゃねーの?と思わせる。
他にもムーグシンセサイザーを担いで走り回ったり、鍵盤にナイフを突き刺したりと大活躍である。張り切りすぎてオルガンの下敷きになり骨折したこともあったはずだ。

EL&Pはシンセサイザーを大々的に取り入れたバンドとして有名だ。
このアイデアはキース・エマーソンが考えついたのではなく、ベースのグレッグ・レイクがキース・エマーソンに勧めたそうだ。さすがである。
しかしファーストアルバムではシンセサイザーはほんの味付け程度。ピアノとハモンドオルガンが前面に押し出されていて、それがかえって迫力に感じられる。

ヘビーな上にもヘビーなハチャトゥリアンの「未開人」から始まるこのアルバム。
やたらと覚醒します。





(2005年2月19日)