「ヒグマはいない」
2006年7月7日(金)〜7月9日(日)
後ろから来た車がさーっと抜いていく。
片側1車線なのにである。私がそれなりのスピードで走っているのにである。
とにかく道がまっすぐで市街地以外は信号なんてないから、やたらと快適に走れてしまう。
私を抜いていくのも血気盛んな若い男性というわけではなく、買い物帰りの主婦風の人やら女子大生風の人やら
北海道の車は早い。
私は結論した。

配偶者と共に発作的に北海道に来た。初めての北海道である。
女満別空港に到着した時は福島の喜多方みたいなところだなあ、などと思ったが、レンタカーで走り出してみるととてつもなく土地が広い。
北海道は広いところだ。


まずは釧路湿原を目指す。
目指す。
目指す。
しかし一向に着かないのである。ドライブそのものは快適なのだがとにかく遠い。
いったいどこに向かっているのか忘れかけた頃、釧路湿原に到着した。
展望台に行ってみる。展望台といってもちょっとした丘だ。
林を抜けると
釧路湿原があった。
緑の絨毯の中に鈍く光り、のたうつ釧路川はまさに龍の如し。


時間も遅くなっているので次に阿寒国際ツルセンターへ行く。
閉館間際に駆け込んだが、係の人が親切に案内してくれた。
ここでは数羽のタンチョウを飼育している。捕獲したのではなく人工飼育である。片方の翼の羽を切って飛べなくしてあった。
間近にタンチョウを見た私は興奮し、やたらと質問し、いろんなことを知った。
タンチョウが渡りをしない留鳥であること。1回に卵を2個産むこと。4〜5年で成長になること。夏は広い縄張りを作って繁殖し、冬は群れを作って行動すること。体重が8キロ〜10キロあること。オオワシですらタンチョウに突付かれると致命的であること。
最大の天敵は人間だそうである。
タンチョウが誤って食べた空き缶(!?)が展示してあっった。強力なくちばしで空き缶を粉々にして喰ってしまうのだそうである。
タンチョウは思っていたよりずっと大きく美しい鳥だったが、そばに来られると恐い気もしたのである。

この日は阿寒湖のそばの食堂で夕食。屈斜路湖湖畔のホテルに泊まった。




翌日は知床半島を目指す。
北に向かって走っていくといきなりきれいな海に出た。
オホーツク海だ。
オホーツク海は藍色。沖縄の海のような爽やかさはないが、すんごくきれいある。
海岸沿いを進むとオシンコシンの滝に着いた。
ここは全然期待していなかったのであるが、きれいな滝だった。海のすぐそばにこんな滝があるのがたいへん不思議である。
必死でカメラに収めようとするが、距離は近すぎてうまく撮れない。何回かチャレンジしたがあきらめた。


ウトロを抜けてさらに進み、やっと知床五胡に到着した。
五胡全て回れることを期待したのだが、案の定、ヒグマが出たために一湖と二湖までしか行けないとのこと。
施設の方に尋ねると、朝晩一回ずつ遊歩道を見回り、ヒグマがいれば制限をするのだそうだ。
「クマは人を恐がらないんですか?」
「恐がりませんね。この駐車場のそばにも来ますよ。」


ウトロまで戻ってウニ・イクラ丼を食した後、知床峠を目指す。
知床峠にはきっと知床旅情が流れていると確信していたがそんなことはなかった。峠を越えて羅臼に出る。
羅臼に行って驚いたのは国後島の近さである。知床峠では霞んでよくわからなかったが、ここから見ると本当に目と鼻の先である。
あそこが外国か
ここは国境の町なのか
と首都圏出身の平均的日本人の反応をする。

カモメが鳴いて北国の雰囲気作りに余念がない。


ここから南下し、忠類川を越えて日本最大の砂嘴である野付半島に行く。
ここがまた意表をつかれる場所だった。
「最果ての地」「開拓の村」
なんと言っていいかわからないがそんな感じ。海と湿地に挟まれたせまい土地がずっと続くのである。
車を走らせていると遥か遠くの湿地に何やらいる。双眼鏡を取り出してみると、なんとタンチョウの番である。
野生のタンチョウを見たことに驚き、こんな遠くのタンチョウに気がついた自分に驚いた。
タンチョウに一番近い駐車スペース(といってもずいぶん遠いが)では野鳥愛好家がずらりとバズーカを並べて写真を撮っていた。
半島の先まで行き、写真を撮りながら帰ってくると、先ほどの駐車スペースには車が1台だけになっていた。ナンバープレートを見ると佐賀である。
九州から北海道までタンチョウを撮りに来る人、横浜から九州までライギョを釣りに行く人。さまざまである。

さらに写真を撮りながら半島の付け根に戻る。戻りながらふと道路脇を見ると何かいる。
タンチョウである。今度はずっとずっと近い。双眼鏡を出してじっくり観察した。
野生のタンチョウを4羽見たことになる!
うれしいなあ

夕食は屈斜路湖のホテルでバイキング。3人分くらい食べて元を取る。
感動してもせこいのである。


翌日は最終日。
オホーツクの海岸に点在する原生花園を見て回るのだ。
海に出る前に丘の上まで畑が続いているところがあったので登ってみた。そしてびっくし。

広い
ずーっと畑
ずーっと道
向こうに見える林は防風林なんだろう。
下のほうの畑で農家のご夫婦らしき人が畑を耕している。二人ではたいへんだ。


小清水原生花園、ワッカ原生花園と回ったが花は今ひとつだった。でもハマナスを初めて見る。
そうか、知床旅情の「ハーマナスーのさーくころ」というのは今頃のことなのか、と感動しかけたが、パンフレットを読むとハマナスの開花時期は5月から10月と意外に長い。
油断できないのである。

女満別空港へ戻ることしにたが、時間が少し早かったので空港のそばの丘の上にある畑に行ってみた。
ジャガイモの花が咲き、午後の日差しを受けて麦畑が光る。
配偶者は写真を撮り、私は道端に座って麦畑を眺める。
今回の北海道旅行で一番印象に残ったのは、意外にも広い広い農地でした。


レンタカーを返しに行くと店の人が愛想良く話しかけてくる。
「そうですか。クマには会わなかったんだ。」
と言う。そんなに会うもんなのか?

空港の食堂で早めの夕食。
私はジンギスカン丼。配偶者はカニわっぱ飯。
それからホタテドラフトというホタテガイが入った発泡酒を飲んだ。
たいした量ではないのに酔ってしまう。
さあ、この勢いで横浜に帰るのだ。