<つまんない前置き>
人生初の沢登りに行ってきました。
渓流をどんどん登って行き、源流部、つまり川の水がなくなるところまで詰め、そこからさらに上を目指し、稜線の登山道に出て下山するというツアーでした。
私としては3泊4日の大旅行でした。
魚釣りがメインではなかったのですが、釣り釣り日記に掲載することとしました。

2004年8月18日(水)晴れ
「長野へ
のどが痛い。
東京駅で長野行き新幹線を待ちながらのどスプレーを使います。
うーん、そういえば昨日、新宿で小林良彰さんと飲んでる時もちょっとおかしかったものなあ。まいったなあ。
仕事が終わってから山用の服に着替えて来たのですが、どうも調子が悪く、薬局で薬を仕入れてしまいました。
明日から山に入るというのにとても不安です。
まあ、しょうがないですね。なんとかなるでしょう。
午後9時半初の新幹線に乗って出発。
ちなみに今日の隣席は女子高校生のエリさんでした。

長野駅では今回の「森と水」のツアー参加者であるIS君、紅一点のMさん、そして私が渡る吊り橋を揺さぶるガイドの三井さんが待っていました。
IS君は奥只見のツアーで一緒でしたね。
三井さんが私のことを
「イワナはカモノハシさんに任せておけばだいじょうぶ」
などと紹介してくれます。おいおい

三井さんの車で下山予定地近くに移動し、道端にテントを張って仮眠。
星がきれいでした。

2004年8月19日(木)晴れ
「台風が来てるはずだけど
朝食を摂り、ザックに荷物を詰めていると、三井さんの友人Hさんが車で迎えに来てくれました。
2台の車に分乗し、下山予定地であるスキー場に行き、ここに三井さんの車をデポ。
今度は全員でHさんの車に乗って林道入口まで移動します。

日本海を通過する台風の影響が懸念されましたが、今日の天気は上々。
Hさんに見送られて、威勢良く林道を出発しました。
林道を3時間ほど歩いて入渓点に到着。靴下をネオプレーンに替え、スパッツをつけていよいよ川の中へ。
いやーきれいですね。この川は先月も「森と水」のツアーで来たのですが、この感激は変わりませんでした。


軽い高巻きを2〜3回した後、釣りを始めます。
IS君もMさんも登山は専門ですが、釣りは素人だそうです。IS君はテンカラ竿、Mさんは餌釣り竿を三井さんから借りて教わります。
私はいいところを見せねば!と力んだのですが、イワナは1匹しか釣れません。魚影は濃いようですが、魚はフライを見に来るだけです。
砂地にはかなり足跡がありました。夏休みということもあり、多くの人に相当攻められているのでしょう。
結論から先に言いますと、この状況は源流部まで続き、竿抜けを狙う事になりました。

今日のテン場(キャンプをする場所)に到着。タープを張り、焚き火を起こします。
しかし、イワナが1匹だけというのは寂しいですねえ。
そこで三井さんに断わって、50メートルほど川を下り(上流に行くには高巻きが必要なので)、イワナを狙うことにしました。
時間は30分もありません。
今日、主だったポイントがだめだったことを思い出し、速い流れの対岸にある巻き返しとたるみを釣ることにしました。
ざっと見回してポイントは4箇所。最初のポイントにエルクヘアを浮かべると、さっと魚影が走ってすぐにキープサイズが釣れました。
次のポイントでは魚はフライを見に来るだけ。何回もトライしましたがだめでした。
残りのポイントでは1回で計算どおりにイワナがフライに喰らいつきました。
イワナを持って帰ると三井さんに喜ばれました。
イワナの味噌汁は本当においしいです。
釣ったイワナは こうなって こうなりました


夜はそれほど寒くなく、シュラフカバー1枚で充分でしたが、少し興奮しているようで、昨晩に続いてあまりよく眠れませんでした。

あいかわらずのど痛。

2004年8月20日(金)くもりのち小雨 夜になって晴れ
滝登りの日」
向かって左から行けそうなんですが、
スパイダーマンでないと落ちるか。
結局、ハーネスを装着して右から巻きました。
IS君はインディージョーンズ風に滑落!
テン場を撤収して出発。

川を遡っていくと大きな滝。どうやって突破するかしばらく考えましたが、三井さんはいったん下流に戻り、高巻くことに決定。
高巻くとなるとずいぶん距離がある感じです。
三井さんに言われてハーネス(腰と脚にベルトを廻し、ロープを繋いだりする器具)を装着します。ハーネスを使うのは初めてです。
「あれ?これはどうなるんだ。」
「ここはここに留めるんです。」
「そうかあ。よいしょっと。あれ?わっかが余った。」
「カ、カモノハシさん、腰のベルトを先に通してから脚を入れるんですよ。」
「そっかー」

先行き不安なまま高巻き開始。
最初は巻き道がついている感じだったのですが、すぐにそれはなくなり藪の中を進みます。
がさがさやっていると下降地点まで来ました。
やれやれと思っているとアクシデント発生。IS君が大きな音を立てて滑落!
私は最後尾でよくわからなかったのですが、近くにあった倒木と共に滑り落ちたのだそうです。
「落ちる時も下が見えてたのでそんなに恐くなかったですよ。」
と本人はけろっとしてましたが、三井さんは倒木が頭に当たるのではないかと緊張したそうです。


さらにもうひとつ高さのある滝に直面。
ここは滝の横にあるガレ場を残置ロープを伝って上ります。
上まで行ったら崖っぷちの細い巻き道を進みます。ここは草がたくさん生えていて、足元が見えないところもあり慎重に歩きます。
そこを抜けたと思ったら、今度は岩場をトラバース(斜面を横切ること)。残置ロープが張ってあったのですが、下を見ると滝壺まですごい高さです。
私は高所恐怖症ですが、この時ばかりは恐さを通り越してものすごい高揚感があり、
「かかってこーい」
という思いでした。
絶叫ポイント。
画面中央右が私です。


午後3時頃、三井さんがみんなを集めます。
「もうすぐ今日のテン場です。ここで二手に分かれましょう。カモノハシさんはここから竿を出しておかず(イワナ)を釣ってください。
IS君とMさんは川を離れて進んで私と一緒に先にテン場に行きましょう。」
ということで、私を残して皆さんは先に出発。


「うーむ」

今のところキープしているのは朝に釣った1匹のみ。
魚釣りができるのはうれしいですが、必ず釣らなくてはいけないとなるとこれはたいへんです。
それにだいぶ歩いたり登ったりで足にきてますし、夕方になって少し寒いし。おまけに60リットルのザックを背負ったままだし。
「弱気になってはいかーん」
気合を入れて釣りを始めます。目標は最低3匹。

すぐ近くの巻き返しを狙うと1投目でヒット!うひゃひゃ
しかし後が続きません。釣れても25センチ以下のリリースサイズばかりです。
はあはあ言っていると、すぐ後ろの藪ががさがさと大きく揺れます。何か大きな動物がいるようです。
クマかな?と思って振り向くと(なぜかぜんぜん恐くありませんでした)、三井さんです。
「ザック背負ったまま釣るのはたいへんでしょう?私が先に持って行きますから。」
と言ってザックを先にテン場まで運んでくれました。
謝謝

もう一度気合を入れ直し、最後の1匹はテン場前の小沢でゲット。目標数に到達しました。
もはや狩猟班、もしくは食料調達班ですな。


のどの痛みはなくなりましたが、持って来たワインを飲むと気分が悪くなってしまい、夕食が満足に食べられませんでした。
ツアー中、最悪の体調。

この日の夜は恐ろしく寒かったです。
星空がきれいだったのでいやな予感はしていたのですが、寒くて寒くて眠れませんでした。
ちなみにシュラフカバーだけでフリースもなし、というのは私だけ。
装備の甘さをつくづく反省です。

2004年8月21日(土)くもり 夜になって一時雨
「イワナの呪い
「もう7時ですよー。ごはん食べましょう。」
Mさんの声で我に返ります。夜中はずっと目が覚めていたのですが、日が昇って1時間ほど眠ったようです。
シュラフカバーから身体を起こしますが、どうしても目が完全に開きません。
三井さんが
「眠そうだなー」
と言っています。
それでもヤゴから脱皮するトンボのように起きだし、「イワナ茶漬け天然わさび添え」を食べると元気が出てきました。
テン場を片づけて今日も出発です。

しばらく進んでから釣りを始めます。
今日は三井さんがMさんに餌釣りを指導。私がIS君に教えるという手はずです。
もっとも私はテンカラなんかやったことがなく、ひじょうにテキトーなことを教えてしまいます。
しかも選択した毛鉤はフライングクロスアタック壱号改。三井さんがこれを見て大喜びです。
「フライングクロスアタック・イン・テンカラ」と言って笑っています。
IS君はなかなかよくがんばり、毛鉤をイワナに食わせるところまでこぎつけました。しかし合わせのタイミングが悪くおしくも逃げられてしまいました。
IS君の上達は早い
私はフライングクロスアタック
壱号改で1匹


大きな滝を巻くことになりました。
三井さんによると、昔はこの滝が魚止め(これより上に魚はいないということ)だったのですが、明治の頃に下の魚を滝上に放したのだそうです。
昔の人はいろいろたいへんだったんですねえ。

さて、高巻きは滝の横にある崖を上ることから始まりました。
えっちらおっちら登っていくと、三井さんがこれ以上は無理と判断。私達を崖の途中に待たせて一人で上り始めました。
上からロープを下ろしてくれるそうです。
しかし急に待てと言われても崖の途中。足場が悪くて仕方ありません。
私は両足のアキレス腱を伸ばしたまま。脱皮に失敗したセミみたいな状況です。
私の上にいるMさんは手を置いている所に水が流れているために冷たくてしょうがないと言っています。
「三井さーん、あと3分くらいしか持たないです。」
と叫んでみましたが返事なし。
Mさんと二人でじりじりと体勢を変え、安定した足場を確保しました。
その後は順番にロープで尾根まで上り、無事に高巻きを終了しました。


この後、車や小さな家ほどもある岩が続く巨岩帯が多くなりました。これは非常に疲れますね。
それでもみんなでがんばって突破。
今日のテン場に到着です。

テン場で荷物を下ろし、岩に腰掛けて休みます。
「さあて、一休みしたら・・・」
とつぶやくと三井さんが
「おかず釣りですか」

私は漁協か

釣り支度をして川に入ります。
ところがここでアクシデント発生。私はシマノのSCLという6本継ぎの竿を使っているのですが、この一番先の部分をなくしてしまいました。
フライが頭上のきにひっかかったので、竿をあおったらティペット(先糸:ハリス)が切れしまいました。
どうもこの時に先端がはずれ、川の中に落ちてしまったようです。
いくら捜しても見つかりませんでした。

イワナの呪いかなあ。

しょうがないのでトップガイドなしで釣り始めます。まあ、なんとか釣りにはなるものですね。
もっとも後日、サンスイ横浜店にパーツの発注に行ったら、トップなしで釣ると竿が折れる場合もあるのでやめたほうがよいとのことです。

さて魚は狙ったところからどんどん釣れるのですが、食べるには小さすぎます。
1匹だけ大きなのが釣れたのですが、これはラインが竿に絡み付いて逃げられてしまいました。
残念ながら時間切れ。テン場に引き返します。

「どうでしたー?」
「うひゃひゃ」
「・・・・・・・・・・・」

夕食を食べていると小雨が降り始めました。
急は暖かいかなあ、と期待したのですが、昨日ほどではないにせよすごい冷え込みで、またまたよく眠れませんでした。

鼻水が止まりません。

2004年8月22日(日)くもり
竹やぶを抜けて」
朝6時に起床。今日はいよいよ最終日。
朝ごはんをしっかり食べて出発。

川がだんだん狭くなっていきます。
回りを見ると高い山が見当たらなくなってきました。つまり私達のいる所と山の標高差がなくなってきているんでしょうね。
最上流部では本流と枝沢の区別がつきにくいので、地図でよく確認しながら進むのだそうです。
私は地図が読めないので、三井さんたちが2万5千図や遡行図(沢登りで使う地図の一つ)を見ている間にはあはあと息を整えます。


3時間ほど行くと本格的な藪沢になりました。水はめっきり減りました。
「ここを登ります。」
三井さんが指示する方を見ると一面の竹やぶです。
こりゃすごいな。
最後の登り
ここを登るのか!?


三井さんに竹で目を突かないように注意を受け、竹やぶに全員で突入。
もがき苦しむこと10分。
ばさっと登山道に出ました。
やったー
三井さんがみんなと握手。

登山道をしばらく歩き、最後はスキー場のリフトに乗って麓まで。
楽しい楽しい沢登りでした。















写真の一部は「森と水」から提供していただいています。