2005年4月10日(日)雨
「右舷浸水
早くも前途多難だ


SNA707便は定刻どおり16時20分に熊本空港に到着した。小雨が降っている。

SNA=スカイネットアジア航空のことは知人に教えてもらった。
この航空会社は宮崎−東京、熊本−東京間をそれぞれ1日6往復、12便しかない。この区間しか運行していないにもかかわらず社名に「アジア」を入れるのはいかがなものかと思うが、東京も宮崎も熊本もアジアには違いない!ということなのだろうか。
この航空会社の特徴はなんと言っても運賃が安いことである。
他の航空会社の普通運賃が片道25000円程度なのにSNAは22000円。しかもWeb予約をすると18000円。介護認定を受けている人は10000円である。
私がよく行く裏磐梯までの交通費(車代)は高速代、ガソリン代で10000円程度かかる。熊本まで18000円ならずいぶん安い気がする。しかも横浜の自宅から熊本空港までは4時間程度なのである。

これはいいな!と思ったのだが不思議なこともあった。
スカイネットアジア航空のHPを何回も見ているうちに気がついたのであるが、この航空会社はいろんなことをやめているのである。機内での新聞・雑誌のサービス、飲み物のサービスを廃止、最近では貨物輸送便もやめている。どうも徹底的にコストダウンを図っているようである。
かるーくいやな予感がした。
しかも予約を済ませた後もHPの予約状況を時々見ていたのだが、一向に席が埋まらないのである。
これもかるーくいやな予感がした。
実際には空港でも機内でもSNAのスタッフの対応はよく快適であった。もちろん新聞・雑誌・飲み物のサービスはないので、文庫本を仕入れ、不時着に備えてペットボトルのお茶をしっかり買って搭乗した。

熊本までの飛行時間は1時間45分(帰りが1時間30分程度).
お祈りを済ませてから少し昼寝するとすぐに着いてしまう。なんてことなく空の旅は終わった。


熊本空港で自分の荷物につまづいたりして暴れていると携帯電話が鳴った。バンブーロッドビルダーの井手高太郎さんからだ。空港を出ると高太郎さんが待っていてくれた。
明日から2日間、高太郎さんと熊本で釣りをするのである。

さて、ここから釣行記になるのであるが、実は私は自分がどこに行ったのかよくわかっていない。なにせ福岡と熊本の位置関係も今回の九州行きを決めてから初めて知ったくらいである。その不案内な土地を元ラリーイストの高太郎さんの俊敏な運転で移動したのだから無理はない。
したがって内容的にはよくわかんないところも多くなると思うが私を責めてはいけない。

九州自動車道で人吉に向かう。
後で地図を見て知ったのだが、人吉と言ったら鹿児島のすぐ近くだ。
小雨がずっと降っている。私が釣りに出かけると必ずと言っていいほど天候がおかしくなる。私が呆然と空を見ていると高太郎さんが
「恵みの雨ですよ」
と励ましてくれる。
高太郎さんはオフには岡山の管釣りに出かける。
700キロあるが日帰りだそうである。

「だって時速700キロで行けば1時間でしょ。
時速350キロで行けば2時間でしょ。
時速・・・」


今日は釣りをしない予定だったが人吉に早く着いたようで、高太郎さんが少し釣ってみようと言う。
連れて行っていただいたのは道路脇を流れるわりと大きな川。私の感覚からするとヤマメ釣りをするようなところには思えない。でも広くて釣りやすそう。
暗くなるまで1時間ほど釣ったがヤマメはかからなかった。しかしハッチは多く、ヒゲナガカワトビケラがぶんぶん飛んでいて明日からの釣りに期待が持てた。

ここで早くもトラブルが発生した。
ウェーダーが水漏れするのだ。右足がびしょびしょである。この間の蒲田ではなんともなかったがなー。小さくたたんで持ってきたのでそれが悪かったのか?もっともこのウェーダーは一度自分で水漏れを直し、さらにその後メーカーにも修理を依頼し、
「ここまで使っていただければウェーダーも本望です。」
とまで言われた代物である。そろそろ限界かもしれない。

川から上がって高太郎さんのご友人のYさん宅へ伺う。
Yさんと遊びに来ていたFさんと共に近くの旅館へ温泉に入りに行った。
この日はYさんの家に泊まる。いきなりお尋ねしたので気が引けたがご好意に甘えることにした。
Yさん宅で高太郎さんが持ってきた濁り酒を飲む。
Fさんは明日朝早くから学校に行かなくてはならないので
すぐに鹿児島に発つはずだったが
このお酒のためにもう1泊することになってしまった。

人生難しい。

2005年4月11日(月)くもり
「左舷浸水
熊本も昨年の台風の影響であちこち道が崩れたりしているそうで、高太郎さんの計画が若干変更になった。
川辺川水系を目指す。

Yさんにお礼を言って出発。

最初の支流は手ごろな広さの川。
高太郎さんにポイントや流し方を教わりながら釣り始めたが魚の反応は今ひとつ。ドライフライに何匹か魚が飛び出たが腕が悪いため空振りだった。


次にかなり広いところへ行く。
水量も多く普段こういったところで釣りをしていない私としてはどうしていいかよくわからない。高太郎さんがポイントを教えてくれるが私の腕では距離が出ないのでフライがそこまで届かない。うーん、#4を持って来れば良かったかなあ。
流れから大きな魚が出たがかからない。高太郎さんをがっかりさせてしまう。
今度は堰堤の落ち込みからの流れが岩にぶつかるところを狙う。
岩ぎりぎりのところでバシッと魚が出た。これはうまくかけることができた。小さいが九州での第1号である。
その後も釣り上がるが魚は出ない。今日はハッチも少ないようである。
あきらめて大移動する。
遥か下のライズを狙う高太郎さん。
高いところは怖い。
九州の初ヤマメ。
岩ぎりぎりのところでフライに出ました。


途中で高太郎さんがタコネーズを買ってくれる。
タコネーズは去年ライギョ釣りのときにも食った。たこ焼きなんだけれども中にマヨネーズが入っているのだ。ちょっと高カロリーな感じだがすごくおいしい。大雑把に言うとお好み焼きの味だ。熱いのをはふはふ言って食べる。
すごい段数の階段。
ここがどこかはちょっと言えない


次に釣ったのは源流部。
たいへんきれいな川だ。
しかしこの辺からウェーダー事情がさらに悪化。右だけではなく左も漏り始めた。しかも「しみる」なんてレベルではなく、ザブザブである。足が重くなるとは正にこのこと。しかもひざ上まで濡れているので岩に登ろうとするとウェーダーがぴったり張り付いて足が上がらない。高太郎さんに迷惑をかけつつ遡行する。
入渓したのが午後だったため脱渓点までかなり急がなくてはならない。かなりがんばったが私の足は遅く、目的の脱渓点のかなり手前で川から上がることになった。絵に描いたような足手まといである。

それにしてもここは本当にきれいな川だった。次に来るときはゆっくり全部を釣ってみたい。というようなことを私が話すと高太郎さんが笑った。
「ここの10倍くらいきれいな川もありますよ。」

九州はいい所だ。
高太郎さんはめちゃくちゃにうまい。
簡単に、実に簡単に魚を釣ってしまう。
ここで最初に釣れたのはイワナ!
九州にイワナはいないはずだが・・・・
以前、試験的に放流されたものが
繁殖しているのだそうだ。


九州のヤマメたち。

左下が話しに聞く「マダラ」。
確かに斑点がすごく多い。
川によってマダラの占める
割合が違うとのこと。

この日の最後は川辺川本流でのライズ待ち。
ガガンボがたくさん出たが高太郎さんによると少ないとのこと。ライズは散発。高太郎さんは2回ほどフライに出たそうだが私はハヤのみ。
ライズ待ちは不発。
「呼吸すると300匹くらいのガガンボが肺に入る」
くらいでないとだめとのこと。

うーん
それはいやだな


この日の釣りを終了し、高速道路に乗って南小国町(と思います)へ移動する。
ここですごい温泉に入る。
何がすごいかと言うと、街中の川べりに温泉があるのだ。もちろん露天である。対岸を人が歩くし車も通る。湯船が川面に接しているのである。
なんだがすげー所に来ちまったなーと思ったが、湯加減はとてもいい感じであった。しかしながら川が増水したときに湯船にフナやらコイやらライギョやらが入ってこないのかと少し心配してしまう。

この日はコンビニの駐車場で就寝。
夜半から雨が降り始める。
川の中?にある温泉。
湯船と川の水面が同じ高さ。
温泉のお湯は川に流れていくようになっている。
お湯をためるところは5つくらいあり、
一番上流側は食器洗い場になっていて
ママレモンかなんか置いてある。
ちなみに脱衣所はあるが囲ってあるわけではない。

いいお湯である。

2005年4月12日(火)雨のちくもり
「沈没
左:私のウェーダー水漏れ対策
右:ぱっくり口を明けた高太郎さんの
ウェーディングシューズ

なんとなく貧乏くさい二人。
昨日より私のウェーダーは完全にウェットスーツと化してしまった。
対応策を考えた挙句、コンビニでゴミ袋を買い、それで足を包んでからウェーダーを履くことにした。

今日は村落の中を流れる川を釣る。規模は小さいが水量はかなりある。
九州の川がそうなのか、はたまた高太郎さんの好みなのか定かでないが、今回釣った川は全般的に水深があって流れはけっこう太い。


ここでは時間をかけて釣っていく。
高太郎さんにフライの流し方を注意されるがうまくできない。いろいろ考えながら釣るとますますうまくできなくなる。脳のキャパが小さいせいなのか。それでも高太郎さんが指し示してくれるポイントはさすがに的確で何匹か釣ることができた。

この川のヤマメは不思議な色合いだった。
全体的に赤っぽく、メタリックというか艶がある。しかも目がとても大きい。なんだか別種の魚のようだ。
高太郎さんは日本中で釣りをしたが九州のヤマメが一番きれいだとのこと。
高太郎さんが釣った良型。
遠くのライズも正確なロングキャストで一発。


ミラージュ4000にも来た


ウェーダーのゴミ袋対策は無駄だった。深くウェーディングすると水がゴミ袋に流れ込んでくる。ソックス部だけではなく全体的にだめになっているようだ。
濡れてもそれほど不快ではないが、深いところにいると足が冷たくてたまらない。
川から上がってウェーダーを脱いでみると、足に履いていたビニール袋が水筒になっていた。
高太郎さんが気の毒がってくれる。ただし笑いながらだ。
全体的に赤っぽく、光沢が強い。
目がとても大きい。


近くの川を見た後、せっかくなので阿蘇の白川に連れていってもらう。時期的には遅いが、運がよければ釣れるかもしれないとのこと。
阿蘇の外輪を越えて平野部に下りていく。白川は大きなゆったりとした流れの川だった。雑誌の写真などで見たイメージに近い。
川を見ているとライズを発見。
さっそく高太郎さんのアドバイスに従って釣ってみるが、技量不足で釣ることはできなかった。
高太郎さんは別な場所で釣れないまでも口を使わせることには成功したとのこと。さすがである。


飛行機の時間が迫ったので荷物を急いで片付け、高太郎さんに空港まで送っていただく。最後の最後までお世話になる。
スカイネットアジア航空は往きの便も乗客が少なかったが、帰りの便はもっと少ない。ペットボトルのお茶をしっかり買って搭乗した。

九州はなかなかエキサイティングでいいところです。

高太郎さん、おつきあいいただきありがとうございました。お世話になりました。






ウェーダーを買わなくてはな。