涼しい」
2008年9月27日(土)くもり時々雨
防水バッグを買い替えた。
前回の岩手釣行では、
新幹線に乗るのに都合が悪かろうと
破れたバッグにガムテープを張りまくって補修したのだが、
かえって貧乏臭くなってしまったので。

郡山駅を出て「しまった」と思った。
寒いのである。
フリースもダウンも持ってきていない。しょうがないなあ、とつぶやきつつレンタカーを借りて裏磐梯へ向う。
今回の釣行は帰りまでずっと寒かった。

おやど風来坊の一美さんが今日はSちゃんと一緒に釣りに行きましょう、と言っていたのだけれど、到着してみるとSちゃんは遅れて来るので今日は一緒に釣れないとのこと。
でもお湯割りさんとMちゃんが風来坊に来ていた。
このお二人に初めてフライキャスティングを教えたのは一美さんと私なのだ。一美さんに教わったことは孫の代にまで語り継がれるべき幸運と言わねばならないが、私に教わったことは七代祟る不幸と言わねばなるまい。
今日はこの4人で釣りに出かける。行先はZ川だ。
昨日から降っていたという雨も気になるが、何よりも少し涼しすぎる。
二手に分かれて釣り始めるがドライフライへの反応が芳しくない。寒いからかなあ、と1時間くらい進んで行くと上流から一美さんとMちゃんが戻ってきた。先行者がいるとのこと。釣りを打ち切りラーメンを食べに行く。
一美さんは午後から用事があるとのことなので、お湯割りさん、Mちゃんと共にK沢へ移動した。

今回の新兵器。
一美さんにもらったゼンマイの綿毛で巻いたフライ。
水切れがよくてなかなか

二人はまだフライフィッシングを始めて1年。だから私がエラソーにポイントはあそこだここだと言いながら釣り進んでいく。
不思議なことにMちゃんに教えるポイントからは魚が出るのだが、なぜかお湯割りさんには出ないのだ。このままでは二人の将来に影響が出るのではないかと危惧した私は、右だ左だ、上だ下だと必死で声をかけるのだが、結局、お湯割りさんに釣果はなかった。
二人から「カモノハシさんも釣ってください」と言われる。下手なのがばれるとまずいなあと思いながらフライロッド降ると、奇跡のように小物だがイワナが釣れてしまった。こういうことは大事にしないといけないので、この日は二度とロッドを振らなかった。
夕方になるとやたらと寒くなったので、釣りを切り上げて風来坊へ戻る。すでにSちゃんが到着しており、Mちゃんと再会をきゃーきゃー喜んでいた。

この日はエキスパートカップル、ジャック&ベティさんも来ていて風来坊はにぎやか。
左上:お湯割りさん
右上:Mちゃん
左:奇跡のコブリーイワナ


なぜか布団が3つ。
カモノハシ、お湯割りさん、一美さんの3人で寝る。
まさに釣り合宿!

2008年9月28日(日)くもり時々晴れ
今日はSちゃんと一緒に釣りに行く。
女性と二人で釣りをしたことはないのでスーパーへヴィー級に緊張するのだが、一美さんは野球の練習があるから、と呟きつつ我々を見送った。
お湯割りさんとMちゃんは大倉川、ジャック&ベティさんはK沢中流、私とSちゃんはK沢上流へ入る。

釣りを始めたが魚が全然出ない。最初は女性と一緒というプレッシャーのせいかと思ったがどうも違うようだ。そのうちSちゃんが真新しいフライが木に絡まっているのを発見。先行者ではないようだが、昨日あたり釣り人が入っているようだ。
23秒ほど考えた挙句、川を変えることにする。少し迷ったが、昨日、Sちゃんが爆釣したというK川に行くことにした。

そーいえば一美さんが
「Sちゃんをよろしく」
などと言っていたが、Sちゃんが昨日K川で釣ったヤマメがこれだ。
なんていいヤマメ!
きっと一美さんは、Sちゃんにはこう言っていたに違いない。
「カモノハシを適当によろしく」
Sちゃんは何匹か釣り上げるが、私は1匹がやっと。運の差か実力の差かは不明だが、悲しいことであることには違いない。

釣り場も終盤に差し掛かり、一美さんが「ここには大物が」と言っているところにきた。Sちゃんと二人でこのポイントを「おっちゃんポイント」と命名する。Sちゃんは一美さんのことをこう呼ぶのだ。
私が最初におっちゃんポイントをやってみるが、ドライフライに魚が出ただけで不発。ところがSちゃんは見事にイワナを釣り上げた。
そのイワナを写真の納めようと私はティペットをつかんで引き寄せたのだが、急にはりが外れてイワナが落っこちた。軽くなったロッドが跳ね上がり、ドライフライがびしっと私の手に突き刺さった。

痛い

寒くなったので川から上がり車に戻る。
今日は楽しかったと、Sちゃんは私と握手してくれた。

私なんかと握手していただいて
申し訳ない。
快調Sちゃん


2008年9月29日(月)くもり時々晴れ
北塩原村をはじめ、
この辺は「塩」のつく地名が多い。
初めて知ったのだが、温泉から塩が採れるのだそうである。
お土産に買いました。

お湯割りさんとMちゃんも、ジャック&ベティさんも、そしてSちゃんも夕べのうちに帰って行った。

ぼけた顔で風来坊に残っているのは私一人である。

一美さんから
「行きましょうか」
と声がかかり、B沢へ釣りに行く。

細い道をてくてくと歩き川に降りる。
ドライフライを流してみると、あっさりイワナが釣れた。
うれしいが、ふとアルケオプテリクスの第4定理
「イージーに始まる釣りはイージーに終わらない」
が頭をよぎる。
案の定それからは大苦戦である。一美さんが2〜3匹、私が1匹(ばれちゃった!)のみ。
川のあちこちに足跡がある。禁漁間際のためたくさんの釣り人が入っていたようだ。

最後の高巻きの後、魚が急に釣れるようになった。
がぜん盛り上がったが、私の帰りの新幹線の時間が迫ってきている。
二人で焦って釣る。
一美さんはあわてているので、からんだティペットを元に戻せなくなっている。
とうとう一美さんのティペットが切れてしまったので、私のロッドで交替で釣る。
そのうち私のティペットも切れてしまった。
「どうします?次のポイントには尺がいると思いますが」
これ以上釣っていると本当に帰れなくなりそうである。尺イワナはあきらめて先を急ぎ、道路に戻った。

今日は二人とも同じクマよけの鈴をつけている。
喜多方市の雑貨屋で一美さんと一緒に買ったのだ。
帰り道、りんりんりんりんと鈴が鳴る。

りんりん
りんりん




1泊目の夜、風来坊でDVDを見た。
先日、NHKの番組で北塩原村の中学校が紹介されたのだ。
北塩原村には高校がない。だから高校進学となると時間をかけて通うか下宿しかない。大学へ行くとなればなおのことだ。
そんな中学校に代々伝わるバンドがある。その名も裏バンズ。
裏バンズの3年生たちは仲間たちとの最後の時間を大切にして練習に励む。そして村祭りのステージでみんなの音が炸裂する。
番組ではメンバーの生活、将来への想いが語られた。
この裏バンズのヴォーカルが風来坊のお嬢さんなのである。
お嬢さんのことは小学校に上がる前から知っている。
こわがってネコに触ることもできなかったお嬢さんが自分の将来を考えている。
その姿に私は感動するよりも、衝撃を覚えてしまった。


1日目に一緒に釣りをしたお湯割りさんとMちゃんは去年からフライフィッシングを始めたばかり。
フライフィッシングが楽しくて楽しくてしょうがない。少しでも長く釣り場に立っていたいのだ。
どんなことでも吸収してやろうという二人の姿に、人類の根源的なエネルギーを見た。


2日目に私と組んだSちゃんはフライフィッシング歴3年。
でもそのキャリアからは信じられないほどポイントの読みが的確だ。そして釣りがていねい。
人柄そのままに気負いがなく、柔らかなフライラインのループ。
しばし見とれてしまった。


昨年に引き続き、シーズン最後の釣りは一美さんと一緒になった。
私は今シーズンも終わりだなあ、などとのんきなことを考えているが一美さんはこれからもたいへんだ。
ワカサギ釣りのお客さんが押し寄せてくる。
屋形船の準備、船の準備、スノーモービルの準備、お客さんの送迎、氷割り
楽な仕事はないなあと思い、そう伝えると
「でも好きなんですよ」
と一美さんは屈託なく笑う。




私は何をしているのだろう。



旅に出るということは

大事なことらしい