清流」
2009年6月19日(金)晴れ
私の手元に1枚の手書きの地図がある。
会社でいらなくなった書類の裏に赤いサインペンで書かれたものだ。
川の流れが示してあり、有望と思われる支流には名前が書き込まれている。

場所は南会津だ。

この方とは何度か釣りの話をさせていただいた。
ここへは何度も行っているんだよ、とおっしゃってこの地図を書いてくれたが、その数年後に急に倒れられて亡くなられた。
私もこの方が亡くなられた年齢にじりじりと近づいている。

今回の釣行先は南会津だ。



南会津、その中でも南郷、伊南、舘岩は遠い。
最寄りのインターが西那須なのでわりと近く感じるがそこからが遠いのだ。朝早く出たつもりだったが、目的の川に着いたのは9時ころになってしまった。
川のそばの店で釣り券を買う。
店の人に
「どの辺から入ったらいいですか?」
と聞くと
「それは腕次第ですね。」
というナイスな答え。むかつきつつ釣りを始める。

数投目でいいサイズのヤマメが釣れた。そのすぐ上のポイントでも釣れた。
うれしーなーと喜びつつ進むがその後が続かない。魚はいるようだが、今一つ食い気がないみたい。

堰堤の下が大きなプールになっているところへ来た。こういうところは苦手だ。
落ち込みのところにパラシュートフライを入れると大きな魚が寄ってきてフライの回りをくるくる泳ぐ。それからすっと白泡の下に戻ってしまった。2〜3回投げてみたがもう反応しない。
飽きたらしい。
フライをエルクヘアカディスに変える。ティペットに少々クモの糸がまとわりついていたが構わず結ぶ。これがいけなかった。
フライを先ほどのポイントに入れるといきなり大きなヤマメがフライにアターック。合わせを入れると手ごたえあり。やった、と思った瞬間にラインのテンションが



っと軽くなった。
ティペットが切れてる。
このプールには慎重にアメ(痺れ薬)を流し込んでから次のポイントへ進む。

しかしここからは魚の反応がさっぱりなくなってしまった。
しばらく行くと通らずになっていたので無理せず脱渓する。

少し昼寝をして、トマトラーメンを食べて、今夜の宿「かねやまこ」に向かう。遅くなるなら一度寄ってほしいと言われているのだ。
かねやまこの女将さんに6時ころ戻る旨を伝えて釣りに出かける。
ここで逃げたね

痺れ薬


南郷村はトマトが有名なのでトマトラーメン。
味は普通のラーメンで、
そう言われてみればトマトかなというかんじ。

川に着いて橋から流れを覗いてみる。水がとてもきれいだ。この辺は各支流はもちろん伊南川、舘岩川の水もびっくりするくらいきれい。これが南会津の魅力のひとつだ。

水はきれいだが釣りの方は芳しくなかった。

フライを何回か流しても反応がないので次のポイントへ進もうとすると足もとから魚が走る、ということを延々と繰り返す。水位が低いので警戒しているようだ。ちょっといらいらしながら釣っていく。
水量の多い区間に出たので流れをしばらく眺めていると、1匹ライズしているのを見つけた。
慎重にキャスティングする。流れがけっこう複雑でうまく魚の鼻先にフライが届かない、と思っていたら魚の方がフライを追いかけてぱくっとフライをくわえた。
よしっと合わせると、なんと魚の口からフライがすっぽ抜けて私の方へ飛んできた。うわー

ところが

この魚、自分の口からフライがもぎ取られたというのに騒ぐでもなくぼーっとしている。

うーん、なんて素朴なんだ。こんな可愛い魚を針にかけるわけにはいかない、と呟きつつフライにフロータントを塗りなおして再びキャスト。
ええ。鬼ですから。
魚はためらう様子もなくフライにアタック。今度こそと合わせるとばっちり針がかり。
やったー、おおイワナだ、大きい大きい、こっちこっちこっち、

あ、逃げた



川から上がってかねやまこに戻る。
宿の方に聞くと、ここのところ雨が降っていないので支流は渇水気味。魚は警戒しているそうだ。むしろ本流である伊南川、舘岩川の方が人も少ないしいいとのこと。

朝早かったので夕食を済ませるとものすごく眠くなる。
この宿も地図に書いてあったのだ。電話番号を書き入れる時もそらんじておられたようなので、よく利用されていたのだと思う。
この部屋にも泊られたことがあるのかもしれない、などと考えつつ眠る。


2009年6月20日(土)晴れ
朝食前に釣りに行こうと思い4時に起きたが、前日までの睡眠不足のせいか頭がくらくらする。釣りは断念してもう一度寝ることにする。
次に起きたのは7時だったので10時間くらい眠っていたことになる。身長が伸びるかもしれない。

今日もいい天気だ。
かねやまこを出発して目星をつけておいた支流に向かった。しかしなぜか入渓点が見つからない。あちこち回ったてもだめ。
あきらめて別な支流にむかう。ところが今度は川にたどりつけない。カーナビではすぐそばのはずなのに。なぜだー、と絶叫しつつ車を走らせるがどうしてもだめ。

もう少し事前のリサーチが必要だったと反省しつつ、あきらめて舘岩川のそばに車を止めたのは10時近かった。
この辺の川は釣り人には人気があるので、今から他の支流に行ってもだめだろう。舘岩川の河原に座ってしばらく呆然としていたが、宿の方が本流の方が良いと言っていたの思い出した。

だめもとで目の前の舘岩川をやってみることにする。
川が広いのでフラーではなくルアーを選択。長く釣るつもりはないのでウェーダーは履かずにジョギングシューズのままだ。
ルアーを投げてみると、晴天の日中にもかかわらずときどきヤマメが追って来る。場所によってはわらわらとルアーを追跡する。
うれしくなってルアーをローテーションさせながら頑張ってみるがどうしても食いつかない。食い気はないようだ。
けっきょく釣ることはできなかったが、適当に始めた割には楽しく過ごすことができた。

深い所にヤマメが群れている。


昼近くなったので釣りを終了。川から上がろうとしてふと上流を見るとライズだ。
ライズリングが2つ、3つと広がる。
「もう少しやってかない?」と言われているようである。
しかしながらヤマメの姿を見ることもできてある程度満足していたので、「また今度ね」と川に向かって呟いてから南会津を後にした。