「雨と戦う
2009年7月9日(木)雨時々曇り
携帯電話が鳴る。
「今どちらですか?」
「横川のサービスエリアです」
「雨はどうですか。こちらはすごく降ってるんですよ。現地の天気はわからないのですが、どうしますか?」

今日はペンションスタートラインのオーナー古川さんにZ川を案内していただくことになっている。

渓流釣りで大事なのは情報だ。

入渓点はどこなのか。
脱渓点はどこなのか。そもそも脱渓点はあるのか。ないなら生きて帰ってきた人は何人くらいいるのか。
釣れるのはヤマメなのかイワナなのかアハイアグランンディなのか。
釣り人は多いのか少ないのか。
ワニはいるのかいないのか。いるとしたらオリノコワニなのかクチヒロカイマンなのか。

こうしたことを知っているのと知らないのでは大違いである。
そこでせっかく有名なZ川に行くのだからと古川さんに案内をお願いしたのである。
古川さんはたいへんお忙しいのだが、私のメールを読み、こやつを案内しないと川でアメを使用しかねないと危惧されたのか案内していただけることとなった。

ところが雨である。
私の場合、雨くらいで予定を変えていると一生釣りなどできそうもないので、無理を言って予定通り案内をお願いする。


待ち合わせ場所で落ち合った後、Z川へ向かう。雨は小降りにかわり、なんとかいけそうである。
入渓点となるところでは車を止め、古川さんが一つ一つポイントを教えてくれる。雨の影響でほんの少し濁っているようだが、釣りには問題ないだろう。

午後から仕事の入っている古川さんといったんお別れし、一人でどしゃどしゃと川へ入る。
Z川は豊かな森に囲まれたたいへんいい川である、などと感想を胸に抱いていると急にざーっと降ってきた。
この日はずっとこうした天気で、雨脚が強くなったり弱くなったり。雨が小やみになると魚の反応があった。雨が強い時はただつらいだけである。
それでも夕方までに数匹のヤマトイワナを手にすることができ、満足してスタートラインへ向かう。
ピーコックボディのパターンに反応がいい。
Z川は支流のほとんどが禁漁。
釣れるのは天然のヤマトイワナ。
遊歩道にはこんなものと説明文が。


2009年7月10日(金)釣りをしようとすると雨
とりあえず
晴れたふりをしてみたところ
夜中はずっと雨が降っていたようだが、朝、起きてみると晴れ間が見える。
うーれしいなうれしな、とスタートラインで朝食にかぶりついた後、Z川へ向かう。天気は見る間に悪くなり、川に着くころにはどんよりと雲が垂れこめた。

昨日もそうだったが、平日にもかかわらず車が数台止まっている。さすが超有名河川である。
古川さんからは川幅が広いので、先行者がいても間をあければ釣れますよと言われているが、先行者がいなさそうな所から釣り始める。

ドライフライを流すと、すーっと魚が寄ってきて、すーっと帰って行ってしまう。どうもいけない状況のようである。
そしてしばらくするとA10サンダーボルトの銃撃もかくや、と思わせるような強烈な雨となった。ドライフライが自然にウェットフライに変わってしまう。しかも水かさが増えてきたようである。この川で鉄砲水によって死ぬことはないと思われるが、空は真っ暗になるし、とっても不穏なので、かさかさと這いまわって川から上がって車に戻る。

すると雨が止むのである。

疲れたので1時間ほど昼寝する。

起きてみるとまだ雨はやんでいる。昨日の入渓点付近を釣ってみることにする。
車で移動して、ウェーダーを履いて、ウェーディングシューズを履いて、ロッドを持つと激しく雨が降ってきた。誰かが見ていて操作しているのではないかと考える。
釣り始めてみたが魚の反応はない。魚の方もこの雨ではフライがどこにあるかわからないだろう。
晴れていれば周囲の景色を楽しみながらということもあるのだが、今は真っ暗である。本当にクマが後ろにいようが前にいようがわからない。

つらい。

それでも1匹くらいは上を向いている魚がいるだろうと考えて、なるべく水面がフラットなところを釣っていく。
雨脚が弱くなった。
ばしゃっと魚がドライフライに出た。やったね。
掬いあげたイワナに思わず
「えらい」
と言ってしまった。

その後、少し下流に移動してみると魚の反応が出始めた。残念がら数匹を糸切れで逃がしてしまったが、それでも1匹少し大きなのを釣り上げることができた。
今日も楽しく終われました。

努力が報われた珍しい例。
どしゃめしゃ


日釣り券は315円!
放流は行わず、その分の資金を監視に回すことにしているとのこと。

好評発売中だ。



2009年7月11日(土)晴れ時々曇り
朝食前に車に行ってみると、車内が少し臭い。
ウェーダーやウェーディングシューズはもちろん、ザックやタオルもびしょぬれなので、車内がしけってしまっている。
この峰の原高原に車上荒らしもいなかろうと、ドアを全開にし、装備をその辺に広げて干すことにする。
後で古川さんがこの光景を見て、
「釣り師の車ですねえ」
とうれしそうに感想を言っておられた。

スタートラインをチェックアウトした後、T沢に向かった。しかし、すで先行者が複数名おり、あきらめて大門川に向かう。
大門川ではルアーを投げるとすぐにイワナが釣れたが、すぐに先行者に追いついた。大門川は人が多いのであまり気にしてはいけないが、どうせならと支流の本沢に行ってみた。
本沢は狭いのでフライで釣ってみる。
1回ライズもあり、足もとから走ったりしたので、魚はいるようだが私には釣ることができなかった。

それにしてもたまげたのは、ここのクモの糸の太さである。枝に絡まった釣り糸と間違えてしまうくらいである。遡行に難渋する。
ここでは2回ばかりふっとフライがなくなったが、どうやらクモの糸とすれてティペット(先糸)が切れてしまうらしい。ナイロンは強いけど摩擦熱には弱いのだ。
クモの巣だらけのなったところで釣りを終了。温泉に入って家に帰る。





人の迷惑になるようなことをしてはいけません