「当たる」
2018年6月24日(日)晴れ
昼休みのひと時、くちばし通信でお過ごしのみなさん
こんにちは
3日間、裏磐梯にあるおやど風来坊に行って釣りをしてきました。
さて、私の運のなさは大地のごとく揺るがないのですが、今回は珍しく天気予報では3日間とも晴れ。とてもいい釣りができそうな予感がしました。
朝、おやど風来坊に到着。
一美さんと一緒に釣りに行くはずだったが、奥様に急用ができたため一美さんはペンションに残ることに。
そこで前日から宿泊しているKWさんとKO川へ釣行。
KWさんは昼にはこちらを発たなくてはならないとのことだったので、車2台で出発。車と言ってもKWさんはハーレーである。かっこいいね。
こちらはずっと雨が降っておらず、全体的に減水気味とのことだが、この川はもともと水量が多いのでちょうど良い感じ。
ドライフライで釣り始めてみると、数は出ないが釣れればいいサイズのイワナ。KWさんが喜びつつフライロッドを振る。
以前、KWさんと3人でこの川で釣ったことがあるが、その時はKWさんがはぐれてしまい、緊張しつつ探しに行った。
結果的にはなんと言うことはなく、たくさん釣れる淵があったので、KWさんはずっと粘っていたのだ。
今回はそういうことがないようにKWさんを視界から外さない。
ゴルゴ13並である。
お昼になったので撤収。
KWさんに別れを告げ、おそばを食べた後、ST川へ行く。
ここはそれほど減水しているようには見えなかったが、魚は神経質。結局、スレを除いて1匹も釣れなかった。
まあ、いいか。
2018年6月25日(月) 晴れ
連れてって
いや
今日は一美さんと釣りに行く。
昨日はイワナを釣ったので、今日はヤマメが釣りたい!とわがままを言い、山形のTK川へ。
釣り券を購入して川に入ってみると、やはり水が少ない。
10cmくらいの減水だ。
魚は警戒しているのか、なかなかドライフライに出ない。いないのか?と思って何回も流すとがぼっと食いついてきたりする。
イワナは時々釣れるが、ヤマメは最後の方でやっと1匹。
数は出なかったけれど、渓は緑がきれいでなかなか楽しく釣れた。
一美さんと二人で急斜面を登り川から出る。
車で走り出してしばらくすると、一美さんがなにやら探している。
「一美さん、どうしたの?」
「家に電話しようと思ったんですが、スマホをウェーダーのポケットに入れたままです。」
「代わりに電話しましょうか?」
「お願いします。6時に戻ると言ってください。」
「え、一美さん、今日、私以外に宿泊のお客さんいるの?」
「急に決まりまして。」
時計を見ると6時到着はとても無理。
うわあ。
焦って奥様に電話する。
「もしもし。あ、カモノハシです。はい、はい。今、喜多方を通過中です。はい、はい。えーと6時8分に到着予定です。8分です。8分です。はい、はい。アイスクリームは食べないで帰ります。はい、はい。」
エンジンが唸る。
2018年6月26日(火)晴れ時々曇り
今日も一美さんと釣りに行く。
B沢は豪雨の影響で川沿いの道が崩れてしまい通れないとのことなので、川の中を歩いて上流へ行く。渓流釣り3日目となると、足がずいぶん疲れているのがわかる。
しかし、今日は帰らなくてはならないので、遡行のスピードを上げる。
この川も減水しているが、歩きながら淵を見ているとイワナがひらひらと泳いでいる。
ドライフライを流してみると、減水のため完全に警戒しており、ドライフライに出ない、出ても食わない、食ってもばれる(針が外れる)、の繰り返しである。
でもこういう状況の方が熱中するもので、一美さんと二人で
「うわー引き返された」
「うわーばれた」
と騒ぎながら進んでいく。
釣れる中には大きなイワナも混ざる。
そろそろ今日の釣りも終盤というところでゴルジュにさしかかる。ゴルジュというのはV字谷とも言い、川の両側が切り立った地形のこと。
でもここのゴルジュは小規模で、増水していなければなんということのないところだ。
一美さんが釣りながら進んでいき、私はその5mくらい後ろを付いていった。
突然、頭と左肩に固いものがぶつかった。
上からの衝撃だったので、つぶされる形で水の中にひざと両手をついた。
「痛い」
続いてばしゃんと音がした。目を開けてみると大きな木の枝、というより丸太が右側に転がっている。
これが落ちてきて当たったんだと悟る。
頭が痛くて立ち上がれない。
「大丈夫ですか。」
一美さんがあわてて戻ってきた。
「どうしたんですか。」
「この木が、上から落ちてきて頭に当たったみたい。」
「ええっ」
「うー」
水の中で四つん這いになりながらうなる。
「ここから離れましょう。」
「うん」
フライロッドが木の下になってしまっている。水の中だから折れてはいないようだ。フライロッドを拾うために右手で木を動かそうとしたが重くてだめ。体重をかけてやっとどかした。
一美さんが吹っ飛んだ帽子を持ってきてくれた。
少し離れたところに腰を下ろす。
「大丈夫ですか。」
頭に触ってみると、天頂の少し左に小さなこぶができているが、大きな外傷はないようだ。身体をチェックしてみると、上から木につぶされたときに左ひざから突いたようで、左ひざが痛い。
あらためて落ちてきた木を見ると大きい。6mくらいあるだろう。先端の方に当たったのでこの程度で済んだらしい。
また、少しずれて当たったことも幸いした。頭のてっぺんに当たっていたら命はなかったかもしれない。
しかし何という偶然だろう。
あの木はどこか上の方に引っかかっていて、ちょうど私が歩いていたタイミングで落ちてきたのだ。
しばらく休むと落ち着いてきた。
しかし問題はこれからだ。
この先に滝があり、脱渓するためにはその滝を高巻きしなくてはならない。高巻きというのは滝の横を登っていって滝の上に出ることだ。
脳震盪を起こしていたら超えることはできないだろう。下流に引き返すには遠すぎる。もうすぐ夕方だ。
ここでビバーグするためにはどうしたらいいだろう、と一瞬考える。
石の上に片足立ちしてみる。バランスはとれた。頭は痛いが右足でも左足でも大丈夫だ。
「行きましょう」
慎重に歩き出す。すぐに轟々といやな音のする滝に出る。
高巻き開始。
うまく登れない。どうも頭を打ったせいというよりも、頭を打ったことで平常心を失ってしまっているためのようだ。
気分を上げるために無理やり声を出していく。
「一美さん、どっちー」「うわー高ーい」「落ちたら死ぬねー」
何とか滝を超える。
滝の上でも少し釣ってみたが、集中力が続かずすぐにやめる。
脱渓点まで行き、草むらをかき分けて道路に出たときにはちょっとほっとした。
歩くことに問題はなかったが、一美さんに入渓点においた車を取りに行ってもらう。道路わきの駐車スペースでウェーダーを脱ぎ、地面に座って一美さんを待った。
その後、おやど風来坊でシャワーを借り、慎重に運転して家に戻った。
家に着いた時もほっとした。
事の顛末を聞いた配偶者は
「あなたは宝くじには当たらない。」