「命綱」
2006年11月
よじ登るのは楽しい


今年の4月に深瀬信夫さんのロッククライミング講座に参加した。
講習内容はロープワークが主であったが、ここであまりにも登坂力のない自分に気づかされたのである。
岩登りなんてどうでもいいことではあるが、今後のことも考えて横浜にあるBPUMP2に行ってみた。BPUMP2はボルダリングジムである。
ボルダリングというのはボルダー(大きな石)をロープなどの確保を使わずに登ること。ボルダリングジムは室内の壁にホールドと呼ばれる手がかり・足がかりがセットされており、これをよじ登るのである。高さは3メートルくらい。床にはマットが敷いてあるのでよほど変な落ち方をしない限り怪我はしない。
さて、ジムに行ってはみたものの登れない。ジムの壁には上る手順が示されており、難易度別に色分けされているのだが、その一番簡単なやつに四苦八苦する。
当然ジムには人がいっぱいいて交代で登る。だから自分のぶざまなところはみんなが見ているのである。
とても悲しい。
でも、ま、練習だから、などとつぶやきつつ数回通ってみた。

すると

だんだんおもしろくなってきたのである。
ジムで何回も失敗していると、ホールドの位置を覚えてしまう。暇な時にその手順を考えるのだ。
あそこを右手で取って・・・あそこに足をかけて・・・
そして次にジムに行ったときにその手順を試してみると

登れる!

ジムに行った後は腕がびりびりに筋肉痛になったが、足の使い方を工夫するとそれも少しずつなくなってきた。
レベル的に初心者であることに変わりはないが、壁に取り付くのは楽しい。

9月には森と水の三井さんにクライミングの講習をしてもらった。
やっぱりロープを使って高いところに行くのは、けけけ、と楽しいのである。

そこで
PUMP2で行っているビギナースクールに行くことにした。
全3回の講習である。


<1回目>
PUMP2は最新鋭のクライミングジム。
ワールドカップが開催できる仕様になっているそうだ。
クライミングのワールドカップについてはオオサンショウウオの葬式と同じくらいよくわからないが、なんだかすごいぞ、ということだけはわかる。こんなところに自分が来てしまっていいのかという問題はあるのだが来てしまうのである。小心な割にはずうずうしい。

生徒は4人。
インストラクターはこのあいだテレビで見た「デス・ノート」に出てくるLが明るくなったような人である。
まず、ボルダリングのフロアに行ってかんたんな課題を2本登る。ここでLさんが基本的な登り方を説明してくれる。おお!というくらいのお役立ち情報であった。
なるほどね。こうやってのぼんのか。

次にルートエリアに移動してハーネスを着ける。8の字結びの練習。ATCによる確保(クライマーの墜落をロープ操作で止める)の練習。
そしていよいよクライミング開始である。
ルートエリアはだいたいビル3回分くらいの高さがあるから10メートルくらいか。上の方にいる人が少し小さく見える。
2本ずつ登って終了。
私は仕事帰りのせいか肩の筋を痛めてしまって上まで行けず。悔しい。


<2回目>
前回はトップロープによるクライミングだったが、今日はリードクライミングの練習をする。
この違いを文字で説明するのは難しいので省略するが、リードクライミングの方が難しいのだ。しかしいわゆるフリークライミングではリードクライミングでないとクライミングに成功したとはみなされないのだそうだ。

しかしいきなりリードクライミングをすると怪我人続出ということにもなりかねないらしく、まずはトップロープで登りながら、別なロープをクイックドロー(ひも付きのカラビナのようなもの。通称ヌンチャク)にセットしていく練習をする。
これが難しい。余裕がないこともあり、クイックドローにロープがうまくセットできないのだ。手間取るとどんどん体力を消耗してしまう。
なかなかしんどかった。


<3回目>
リードクライミングのビレイの練習をする。トップロープの場合は手繰る一方だが、リードクライミングのビレイはロープを出したり手繰ったりと忙しい。
そしていよいよリードクライミングである。1回目は普通に登り、2回目は落ちる練習をする。
落ちる練習ではクライマーは壁に叩きつけられないように足で壁に着地(?)し、ビレイヤーはクライマーがうまく止まるようにロープを張る。
今日の参加者は5名だったので、私は最初は後ろで見ていた。
すると1組目でアクシデント。
墜落の練習の際の声掛けがうまくいかなかったらしく、クライマーが壁から飛び降りた際に、なんとビレイヤーがロープを放してしまった。
幸いインストラクターがすぐにロープを掴んだので2メートルくらい落ちて止まったが、床まで落ちていれば骨の2〜3本は折れたかもしれない。
ちなみにクライミングでは下まで落ちることを「グランドフォール」と言うのだそうだ。横文字で表現しないでほしい。
なお、ビレイヤーは決してロープから手を離してはいけない。大大大原則である。
この騒ぎで我々はジム中の注目を浴び、いろんな方からありがたいアドバイスをいただくこととなった。
一部始終を目撃した後に墜落の練習は怖かったが、ここは根性で乗り切った。


こうしてビギナースクールは終了した。
平日の夜なので通うのが少々たいへんだったが、いい経験になりました。


次はどうしようかなあ